山口県曹洞宗青年会 - 曹洞宗の概要 - 写経のすすめ

写経のすすめsyakyo

写経とは

 写経とはもともと仏教の経典を書き写すことによる僧侶の修行のひとつでしたが、現代では心を癒す趣味として広く親しまれています。心を落ち着かせるため、亡くなった家族の供養のため、様々な願いや祈りの気持ちを込めて、自宅で一人静かに写経をする方も多いようです。

 しかし、みなさんには、写経を通じて何か見返りや成果を求めるだけではなく、写経そのものを楽しんでいただきたいと思います。写経という行為自体が功徳(くどく)です。写経は本来、書き写すことで功徳を求めるのが目的ではなく、書き写すことそのものが目的なのです。

 曹洞宗の坐禅は「只管打坐(しかんたざ)」といわれるように、ただひたすら坐ることに撤します。ひたすらに坐るというのは、それによって何かの結果を得る手段ではなく、目的そのものだということです。この坐禅の心は日常生活においても大切です。毎日の何気ない生活の一瞬一瞬になり切ってつとめることが、私達にとっての修行であり、仏の生活なのです。

 写経も立派な仏道修行です。経典を書き写すことになり切ってつとめることが仏のいのちをいかす道となるでしょう。みなさんもぜひ写経することそのものを楽しみ、「写経させていただく」という感謝の気持ちを持って、心豊かな時間を味わってください。

準備するもの

     
おもな道具

 筆、硯、墨(墨汁)、水、下敷き、文鎮(クリップ)など。筆ペンを使って書いてもいいでしょう。

手本

 経典または写経用台紙。般若心経が一般的ですが好きなお経をどうぞ。

写経用紙

 あらかじめ罫線が引かれた写経用紙。写経用台紙と写経用紙はセットで市販されています。

室内

 できるだけきれいに掃除をし、仏間を使用する場合はお線香や灯明をお供えしましょう。居間などを使用する場合でもお香をたくと気持ちが引き締まります。

身支度

 手を洗って口をすすぎ、着衣を調えます。正座をする場合は坐りやすい服装がよいでしょう。

写経の作法

1、上記の準備が整ったら、机の前に坐り、姿勢を正して呼吸を調えます。
2、静かに墨を磨り、心を落ち着かせます。
3、手を合わせ、読経します。
4、読経が終わったら写経をはじめてください。(写経の書き方は次項)
5、お経を書き写したら、日付を書きます。
6、願文などがあれば書いて下さい。
7、氏名を書き、末尾に「謹写」と記して下さい。
8、手を合わせて「普回向(ふえこう)」をお唱えします。
9、書写した写経用紙は、箱などに入れて保管し、適宜菩提寺等へ納経してください。納経先のお寺には事前に連絡し、納経料などの確認をして下さい。

普回向「願わくは此の功徳を以て、普く一切に及ぼし、我等と衆生と、皆共に仏道を成ぜんことを。」

写経の書き方

(1)写経の書体

 写経では日常私達が使っている現代漢字とは異なる書体の漢字が多く使われており、現代漢字よりも画数が多く、字形も異なります。まずは手本をよく見てから書くようにしましょう。[(例)現代漢字「仏」、写経体「佛」]

(2)写経の仕方

 また、写経の仕方には模書(敷き写し)と臨書があります。模書は手本を書経用紙の下に敷き、その上から文字をなぞって書く方法のことで、初心者をはじめ広く一般向けです。臨書とは手本を脇に置き、それを見ながら書いていく方法で中上級者向けです。

(3)写経の書式

 写経の構成は以下の通りです。

○内題(ないだい)

 経名を内題と呼びます。一行目をあけ、二行目の頭に書きます。『般若心経』の場合は「摩訶般若波羅蜜多心経」が内題となります。

○本文(ほんもん)

 三行目から書き始める経文を本文と呼びます。『般若心経』の場合は「觀自在菩薩?」が始まりです。『般若心経』では本文は一行に十七字ずつ書き、最終行だけは十八字になります。十八文字になる最終行は「四字、四字、五字、五字」となるよう、それぞれの字群の間を少しあけて書きます。
 なお、この一行十七字という書式は中国から伝わったようですが、なぜ十七字に定められたのかははっきりと分かっていません。

○奥題(おくだい)

 本文を書き終えたら、経名を省略した形でもう一度書きます。本文の次の行に続けるか、一行あけて書いてもかまいません。

○願文(がんもん)

 特別な願いをこめて写経をする場合はお経の末尾(奥題)のあとに1行あけて願いごとを書きます。頭に「為」と書いて、故人の冥福を祈ったり、諸祈願の為などの願文を記します。ただし、写経そのものが目的の場合はあえて書かなくてもよいでしょう。
(例)○○家先代々供養、(戒名)菩提供養、諸縁吉祥、家内安全、学業増進、心願成就、諸災消除、世界平和

○日付、名前

 最後に、願文の次の行に写経をした日付と氏名を書きます。願文がない場合は奥題のあとに一行あけて書きます。

(参考)誤字、脱字の訂正の仕方

以下のような書式で訂正しまよう。

(1)誤字の訂正 間違えた字の横に点を打ち、そのすぐ下に小さく正しい字を書きます。
(2)脱字の訂正 前後の字の間の横に点を打ち、抜けた文字を一番下に書いてその文字の横に点を打ちます。
(3)行の訂正 1行抜かして次の行を書いてしまった場合は、行間の罫線上部に点を打ち、抜けてしまった行を次の行に書いて行頭に点を打ちます。
(4)文字の上下の訂正 逆になった文字の間に英語の「Z」のようなし印をつけます。

写経会のお知らせ

 写経は自宅で気軽にできるのも人気の一つだと思われますが、定期的に写経会を開いているお寺もあります。お寺の落ち着いた雰囲気の中、仲間と一緒に写経に取り組むのもまたいいものです。